2023年03月17日
この1年に懸ける。岩尾 憲の『覚悟』
「もう、先のことは真っ白なんですよ」
一度は『何も見えない』ことを意味する「黒」と表現しながらも、すぐさま「白」に訂正した。『真っ白』と言えば、50年前に人気を博して今もなお愛される某ボクシング漫画のセリフに代表されるように、燃え尽きたことを表現する際に用いられる言葉だ。
岩尾 憲は、燃え尽きようとしている。
トレーニングのどの1シーンを切り取っても、全力で取り組む。ウオームアップのステップやダッシュ1つを取っても、一切手を抜かない。昨年からそうだった。きっとこれまで在籍してきたチームでもそうだったのだろう。
「それだけが取り柄ですからね」
岩尾はそう言って笑うのだが、今年は昨年と何かが違う。鬼気迫るという表現は過大かもしれない。全力度が昨年以上、という日本語はおかしいのだろうが、そう言いたくなる。印象でしかなく、何かを具体的に提示できるわけではないのだが、そうしつこく問われると岩尾は、取り組む姿勢に変化はないことを前提にしながら、こう続けた。
「僕自身の違いで言えば、マインドは違います。この1年に懸けています。いつも1年に懸けていますが、これまでは何となくでも先は見えていました」
たとえば徳島ヴォルティス時代。1年ではどうにもならないと思う一方、時間をかければ違う未来が見える気がすることがあった。だからクラブに「3年ください」と懇願した。その結果、徳島はJ1リーグに昇格した。
あと1ヵ月ほどで35歳を迎える。大きく分けると、30代後半。プロサッカー選手として過ごせる年月もそう長くはない年齢になる。
「こういう年齢になると、極端に言えば引退とか、カテゴリーを落としてでもあと何年は現役を続けたいとか、所属しているクラブに立場を変えても残りたいとか、いろいろなことがありますよね。でも、そういう考えが一切浮かばないんです。今シーズンが終わるという線を引いた先は、まっさらな白い紙...
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