2025年3月8日、浦和レッズがホームの埼玉スタジアムで今季初勝利を飾ったファジアーノ岡山戦の試合後のことだった。 新キャプテンに勝利の感想を聞こうと、関根貴大の前にメディアが集まる。 「勝てたことは嬉しいですけど、これを積み重ねていかないといけないので、喜んでいるだけではいけないと思います」 初勝利に浮かれる様子を見せなかった関根は、その試合で特に意識していたことを明かした。 「全員とコミュニケーションを取ろうと思っていました。何をしていいか分からなくならないように。今は何がいい。何が悪い。今の状況は大丈夫か。その意思の疎通は大事にしていました」 囲み取材が終わり、関根が去るとともに報道陣が散り散りになると、顔なじみの記者に声を掛けられた。 「めちゃくちゃ頼もしくなりましたね」 その記者はプロデビューした当時から関根のことを知っており、こちらが当時からレッズを取材していることも知っている。 「本当に。11年前とは別人みたいです」 思い出していたのは、2014シーズンの新体制発表会のことだった。あのときも関根は、埼玉スタジアムで報道陣に囲まれていた。 もっとも、ユースからトップチームに昇格したルーキーである。緊張しているのか、18歳の関根は小声でボソボソと話していた。ひとしきり話した後、レッズを長年取材している記者から注意に近いお願いが入る。 「もう少し大きな声で話してくれるかな」 11年が経ち、あの日の少年はもういない。 立場が人を変えるとはよく言われるが、今季の関根によく当ては...

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