2013年12月27日
山田暢久 底知れない天賦の才と…
「才能があるからってそれを利用する義務が伴っているわけではないでしょ」(カート・ヴォネガット『パームサンデー』「自己インタービュー」飛田茂雄訳、早川書房刊より)
山田暢久のプレーを見るたびに、私の脳裏に上の一節が浮かんでくる。
アメリカ人作家のヴォネガットは、文章や彫刻など多彩な才能をもつ姉に、あるときなぜその才能を生かす努力をしないのかと詰め寄った。そして姉から返ってきたのが、上の言葉だった。
過去20年間の日本のサッカーのなかで、山田暢久ほどの天賦の才をもった選手が何人いただろうか。スピード、ジャンプ力、技術、正確で強いキック、そして的確な状況判断。山田暢久は、多くの選手が努力に努力を重ねても手に入れ難いものを、まるでそのへんのスーパーで買ってきたかのように手軽に身につけ、力むことなくそれを自然に出しながら20年にもわたるプロサッカー選手としてのキャリアを積んできた。
特筆すべきはそのスピードだろう。爆発的なダッシュではない。1000馬力のスポーツカーのようになめらかに加速し、トップスピードに乗ってもなお余力を残している。その余力が、走るだけでなく走りながら何をするかが問われるサッカー選手にとって大きな意味をもつ。
山田暢久のデビュー年に...

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