6月18日夕方、埼スタへ向かう車のフロントガラスを雨粒が濡らし始めた。 雨脚は時々弱まるものの、上空は厚い雲に覆われ、当分止みそうな気配はない。 雨の埼スタで浦和レッズを撮るのはずいぶんと久しぶりだ。たしか昨年はJリーグで一度も雨の中での試合がなかったし、一昨年もなかったんじゃなかろうか。 埼スタでの仕事は、晴れていればスタジアムの周辺でサポーターを撮ったり、スタジアムの風景を撮ったりすることから始まるが、雨の日はあまりすることがない。クラブスタッフに挨拶をし、機材を用意すると、あとは選手バスが到着するキックオフ2時間前までぼんやりと過ごす。 スタジアムの照明はすでに点灯され、見事に整備された芝生を鮮やかに照らしている。カクテル光線に照らされてキラキラと光り落ちる雨粒を眺めながら、サガン鳥栖とのゲームで2ゴールを決め、土砂降りの雨に向かって右の拳を突き上げていた原口元気の姿をふと思い出す。あれは確か2012年のシーズンだった。 やんちゃで、炎のように激しい闘争心を持った少年は、ドイツでの3年間でスケールアップし、今ではすっかり日本代表の中心選手の一人となった。たとえ浦和レッズを離れても、この埼スタから巣立っていった選手が活躍するニュースを耳にするのは、いつだって嬉しいものだ。(もちろんできれば今すぐにでもレッズに戻ってきて、力を貸してほしいのだけれど) 午後4時半。いつものように試合開始2時間前に選手バスがスタジアムに到着する。降りてくる順番はほぼ毎回決まっている。まず最初にコーチ陣が降り、その後に選手が続く。一番手は阿部勇樹、しんがりは槙野。そして選手たちが降り切ると最後にバスから姿を現すのはミシャ監督だ。 何枚もシャッターを切り続けていると、時々ミシャはジャケットのポケットに手を突っ込んでキャンディを取り出し、笑顔でこちらに差し出してくる。お仕事ご苦労様、と言われているのかもしれないし、写真うざいからもう撮るなよ、と警告されているような気もする(多分後者かな)。 チームスタッ...


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