2019年10月17日
TURNING POINT vol.09 杉本健勇「ともに歩いている」
TURNING POINT vol.09
杉本健勇(FW/14)
「ともに歩いている」
■浦和レッズでプレーするということ
試合を終え、スタジアムを1周する選手たちには、激しいブーイングが浴びせられた。
9月25日、天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権大会 ラウンド16のことである。浦和レッズはJFLのHonda FCに0-2で敗れ、大会から姿を消すことになった。
この試合に先発出場していた杉本健勇には、試合終盤に得たPKを止められたこともあり、特に厳しい言葉が投げかけられた。
「ファン・サポーターはもちろん、試合をしているオレらにとっても、ここで負けることはあり得ないというか、許されないことだと思っていました。結果的にその試合に負けてしまったので、何も言い訳はできない。久々に試合に出る選手も多く、その中で、みんながみんなチャンスを活かしたいという思いはあった。でも、結果につなげることができずに、ほんまに悔しかった……。
リーグでは(AFCチャンピオンズリーグの出場権を得られる)上位3チームに入るのは難しい状況だったので、来季、ACLに出場するためには、天皇杯に優勝するしかなかった。それなのに、その試合を落とし、望みを絶ってしまったことには、自分だけでなく、チームのみんながみんな責任を感じています」
杉本は「あの1本(PK)は、本当に強い気持ちを持って蹴ったので後悔はしていない」と、振り返る。それ以上に彼が“責任"を感じていたのは、ストライカーとして90分の中で結果を残せなかったという事実である。
「自分自身が得点を決めることができず、チームを勝たせることができなかったですから」
結果を残すことのできなかった自分への悔しさ、苛立ち……そして責任。そうした感情を抱いていないわけではない。
だが、それを口にしたところで、すべては言い訳になる。だから、杉本はぐっと唇を噛みしめると、黙ってファン・サポーターの言葉を聞き続けた。また、それを聞くことが、自分の責任でもあると思っていたからだ。
「ACL(AFCチャンピオンズリーグ)に懸ける思いは、浦和レッズが一番強いと思うんです。それはクラブとしてもそうですし、応援してくれているファン・サポーターの方たちもそう。そこに懸ける思いというのは、本当に強いということを、あのとき、あらためて強く感じた。
だからこそ、(天皇杯に負けて)ファン・サポーターの怒りや悲しみというものが強いということも感じましたし、その中で自分が一番、罵声を浴びせられているということも分かっていました。その責任も感じていたから、厳しい言葉を言っている人たちの顔をじっと見ていたんです」
なかには辛辣な言葉もあった。あまりの厳しい言い回しに、思わず反応してしまうチームメイトもいた。それでも杉本は、唇を噛みしめると、一人ひとりの顔を見つめた。
その表情を、目を見れば、より思いを心に刻むことができると思ったからだ。
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